北陸新幹線が停車する長野県・佐久平駅。その改札を抜けると、世紀末の荒野から蘇ったかのような、異様な迫力を放つ胸像が鎮座しています。漫画『北斗の拳』に登場する、北斗四兄弟の三男・ジャギです。

ヘルメットの冷たい質感、筋肉の隆起、そして溢れ出る悪のカリスマ性。この「ジャギ像」を作り上げたのは、フィギュアメーカーではありません。地元・佐久市で60年以上の歴史を持つ製造業、吉田工業株式会社です。

精密な金属加工技術を持つ「優良企業」であり、売上もV字回復を果たし、順風満帆に見えるこの会社の社長、吉田寧裕(よしだ やすひろ)。しかし彼はある夜、ひとり車を走らせ、闇に包まれた山の中で絶叫していました。

「ひでぶっ!」……とは言わなかったかもしれません。ですが、その心は間違いなく、北斗神拳を食らったかのように粉砕されていたのです。これは、業績という数字の裏で「社長という役」を演じ続け、孤独に陥った男が、泥まみれの掃除道具を手に取り、本当の「仲間」を取り戻すまでの再生の物語です。

吉田 寧裕(よしだやすひろ) / 吉田工業株式会社 代表取締役社長

1970年長野県佐久市生まれ。佐久長聖高校、コロラド大学デンバー校を経て中小企業大学校東京校後継者コースを修了し、1996年に吉田工業株式会社へ入社、2005年に代表取締役社長に就任した。精密加工分野における技術力と品質向上を軸に企業成長を牽引し、人材育成や組織強化にも注力。公的団体の会長職も歴任し、地域との連携を重視した経営を実践している。同社は1965年設立の精密部品メーカーで、自動車・二輪車向けブレーキピストンやABS関連部品を素材から完成品まで一貫生産し、多くのメーカーから高い評価を得ている。近年はEVや建設機械、産業機器、医療機器分野にも展開し、「ものづくり大賞NAGANO」における大賞・エクセレンス同時受賞や「健康経営優良法人2026ブライト500」認定などの実績を有する。なお、趣味はギターで、バンド活動にも精力的に取り組んでいる。

まさかの「ジャギ」。技術の無駄遣いこそ、最高の贅沢

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V字回復の罠。山に響いた「断末魔」

※イラストはイメージです。吉田社長ではありません

「社長役」を降りる。一番汚い場所で掴んだもの

製造業オヤジバンドの「本気」と、これからの未来

※イラストはイメージです。吉田社長ではありません、念の為
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