全人類に読んでいただきたい一冊がある。『ZOMBIE SURVIVAL GUIDE』ーマックス・ブルックス氏(おそらくアメリカの人)による、「ゾンビ災害が起きたときどうやって生き延びるか」を非常にロジカルに書き切った良書だ。

皆さんも熟読して、どのような行動をとるべきかを知っておいてほしい。結局のところ、あなた自身を守れるのはあなた自身であり、ひいては、あなたの大切な人であったり、人類を救うことになるのだから。
ただし、本稿の主題である『カイブツ』と『ゾンビ』はまったくの別物。カイブツについて理解する前に、ゾンビからの逃れ方を押さえていただきたい一心で紹介した。純粋無垢な親切心からである。
カイブツとは

さてさて、カイブツの話です。真っ先にイメージするのは、メアリーシェリーが書いた小説『フランケンシュタイン』に登場する名もない怪物であったり、藤子不二雄先生が描いた漫画に登場する『怪物くん』(ちなみに本名は怪物 太郎)でしょうか。
確かに彼ら(?)は怪物ですが、私たちがカイブツメディアで紹介するのは、化学と錬金術で創造された8フィートの人造人間や、怪物ランドの王子(プリンス)ではありません。空想の世界ではなく、現実世界に存在する人のこと。
わかりやすい例を挙げると、
| 愛称 | 人物名 | 分野 |
|---|---|---|
| 昭和の怪物 | 江川 卓 | 野球 |
| 平成の怪物 | 松坂 大輔 | 野球 |
| 令和の怪物 | 大谷 翔平 | 野球 |
| フェノーメノ(怪物の意) | ロナウド・ナザーリオ | サッカー |
| The big monster | シャキール・オニール | バスケ |
| 美の怪物 | ミケランジェロ | 画家 |
| モンスター | 井上 尚弥 | ボクシング |
| イル・モストロ(怪物の意) | アルファロメオRZ | …車 |
| 将棋の怪物 | 藤井 聡太 | 将棋 |
| キング・オブ・ポップ | マイケル・ジャクソン | スター |
| 怪物と呼ばれた男 | 谷口 ジロー | 漫画家 |
著名人ばかり並べましたが――ここまで来ると、「結局それは、特別な才能を持った一部の人の話でしょう?」と思われるかもしれません。
いえいえ、違うんです。カイブツメディアが扱いたいのは、そこではありません。じゃあ、何なんだと。そもそもカイブツとは何か。ちょこっとだけ自論を展開させてください。
天才とカイブツは、似て非なるもの
まず整理しておきたいのが、天才とカイブツの違いです。
天才は、「理解できるけれど、到達できない存在」。理屈で説明できる。再現方法も、理論上は存在する。だからこそ、賞賛され、分析され、教科書に載ります。
一方でカイブツは、「理解しようとした瞬間に、前提が崩れる存在」。なぜそれができるのか分からない。どうしてそこまでやるのか説明できない。参考にしようとしても、何ひとつ真似できない。だから人は、困った末にこう言います。
「……もう、怪物じゃないか」と。
カイブツは、最初からカイブツではない
ここが最も重要な点です。
カイブツと呼ばれた人は、最初から“怪物”だったわけではありません。
- ただ野球が好きだった
- ただボールを蹴るのが楽しかった
- ただ描くこと、作ること、考えることがやめられなかった
その「好き」を、周りに止められても、反対されても、呆れられても、やり続けてしまった人たちです。もしかしたら、
- 「それで食べていけるの?」
- 「もう大人なんだから」
- 「ほどほどにしなさい」
と言われたかもしれない。うるさいです。彼ら・彼女らは、それでも続けてしまった。自発的に続けざるを得なかった。だって、好きなんですもの。
結果として、本人すら想定していなかったかもしれないパフォーマンスに到達し、周囲の人を驚かせ、喜ばせ、感動させてしまった。その成果に対して、後から貼られたラベルが「カイブツ」です。
カイブツは、自己中心的な存在ではない
ここで誤解してほしくないのですが、カイブツとは「わがままな人」ではありません。私は、むしろ逆だと思うのです。
好きなことを突き詰めた結果、本人の内側から始まった行為が、いつの間にか他人の喜びに変換されている。
- 見ている人が元気になる
- 誰かの背中を押す
- 技術や視点が社会の役に立つ
本人は「好きだからやっている」だけなのに、周囲からは「いてくれて助かる存在」になっている。とても健全な、健全すぎる循環ですね。
一般人でも、大人でも、子どもでも
だからカイブツメディアは、有名人だけを集める媒体ではありません。
- 仕事の傍ら、異常な熱量で何かを作り続ける大人
- 周囲に理解されなくても、夢中になっている子ども
- まだ評価されていないけれど、明らかにおかしな没頭をしている人
肩書きも、年齢も、実績も関係ありません。「好き」をやめなかった結果、(今日時点ではなくても)気づけば誰かに必要とされている人。そんな道を歩いている人は、もう立派なカイブツだと思うのです。
カイブツが増える社会を、少しだけ信じてみたい
このメディアで紹介するのは、「成功者の物語」とは限りません。
- うまく言語化できない情熱
- 理解されない時間
- 無駄に見える遠回り
そうしたものを抱えながら、それでも前に進んでいる人たちの記録だったりします。
好きなことを続けることは、決して自己中心的な行為ではない。むしろ、続けた人だけが、誰かの世界を少しだけ豊かにできる。綺麗事に聞こえるかもしれませんし、たぶん綺麗事ではあるんですけど、そんな世の中をちょっと信じてみたいのです。
ねぇねぇ、がっかりしないで
最後に、タイトルの話を少しだけ。
「カイブツになれなかったすべての大人たちへ」と書きましたが、それは「才能がなかった」という意味ではありません。多くの大人は、好きなことを途中でやめただけです。忙しさや現実を理由に、いったん手放しただけ。
そんなあなたに、「これからカイブツになるかもしれない大人たち」に向けて、この言葉を紹介させてください。
It’s not that you couldn’t become a monster, you just haven’t become one yet.
(あなたは、カイブツになれなかったのではない。 まだ、なっていないだけだ。)




