静岡県下田市を走る「伊豆急行(伊豆急)」。
この電車を愛してやまない17歳の高校生、JINくんが、一度は消えてしまった「車内販売」を自分の手で復活させようとしています。
鉄道への底知れない愛と、地元・下田への熱い思い、JINくんに話を聞いてきました。
「自分の足よりも大事」な電車との出会い

なくてはならない存在というか、自分の足よりも大事なんです。
幼い頃から「電車に囲まれて生活したい」と思っていて、複雑な家庭環境の中でもずっと寄り添ってくれた、体の一部みたいな存在ですね。

「音」がとくに好きです。
レールの継ぎ目を通る「ガタン」という音、加速する時のVVVFインバーターの機械音、止まる時のブレーキ音、全部好きなんですよ。
とくに登場から50年ほど経つ8000系がお気に入りで、昔の技術が詰まった元気な音がするんです。
部活帰りで疲れている時は心地よい子守歌になりますし、憂鬱な朝は逆に元気をもらえます。
高校生が鉄道会社に直談判した理由

車内販売がなくなってしまって物寂しかったのもあるんですが、それよりも地元・下田の観光客が減っているのをなんとかしたくて。
観光を盛り上げる材料として、車内販売があったらいいなと考えたんです。

2025年3月に、自分でプレゼン資料を作って伊豆急行本社に直談判に行きました。
「前向きに考えましょう」という回答をもらえて、今は母校の下田高校「生活科学部」にメニュー開発を依頼したり、ボランティアを募ったりしています。
「好きにブレーキをかけたら、自分じゃない」

周りにどう思われるか、馬鹿にされるんじゃないか、なんて考えたことはありません。
自分が好きなことで、好きにやっている。
そこにブレーキをかけたら、自分じゃないと思うんです。

下田を盛り上げたい、車内販売が面白そう、そんな気持ちがある人と一緒に活動したいです。
鉄道に詳しくなくても全然いいんです。
少しでも興味を持ってくれたら、それだけで嬉しいです。
一人の高校生が描く、伊豆急の新しい景色。
今年の夏、下田の街に心地よい列車の音と、活気ある車内販売の声が響き渡るのが楽しみでなりません。
編集後記:JINくん、本当に車内販売を復活させた

2025年7月21日、観光列車「リゾート21『キンメ電車』」で、一日限定の車内販売が実現した。上りは伊豆急下田駅10時16分発、下りは伊東駅12時52分発。
インタビューで語っていた「下田を盛り上げたい」が、現実の電車の中で、実物の商品として走り出した瞬間だった。

商品開発、地元企業との交渉、ボランティアの取りまとめ、伊豆急行との折衝。
一人の高校生がここまでの座組みを動かすには、たくさんの大人がJINくんに巻き込まれていったはずだ。
母校・下田高校の生活科学部、地元の和菓子屋やパティスリー、ビジネス面で伴走したカイブツプロジェクトのメンバー、そして列車を動かした伊豆急行。それぞれが、17歳の「やりたい」に応えた。
「好きにブレーキをかけたら、自分じゃない」と話していたJINくんは、ブレーキを踏まなかった。




